英語学習者の方にとって「英検」は馴染みが深いテストでしょう。
それに対して”IELTS”はいかがですか?IELTSについてご存知ですか?
IELTSは日本国内では知名度があまり高くない試験ではありますが、英検と異なり国際的に認められている試験です。
この記事では、皆さんがイメージしやすい英検を使いながらIELTSの試験について紹介し、かつそれぞれの試験を比較していきます。
詳細は後述しますが、それぞれの試験で目的が異なるため、ご自身の目的に合った試験を受験しましょう。
IELTSと英検に共通する点

IELTSと英検には1つだけ共通点があります。
それはいずれも英語の4技能(リーディング・ライティング・リスニング・スピーキング)を測るテストである点です。
そのため、それぞれの技能の対策が必要で、満遍なく学習する必要があります。
そして、スピーキングテストもIELTSと英検は似ています。いずれも面接官と直接対峙して行う面接形式です。TOEFLとは異なります。
IELTSと英検の違いと比較

次にIELTSと英検が異なる点について下記の項目をもとにご紹介します。
- 試験目的
- 受験生の数
- 試験会場
- 試験日程
- 試験形式
- スコア算出方法
- 試験結果の有効期限
- 受験料
- 試験時間
- 結果発表までの時間
- 申し込み方法
試験目的の比較
IELTSは2種類の試験に分かれており、それぞれアカデミックモジュールとジェネラルモジュールといいます。
アカデミックモジュールは、TOEFLと同様にオーストラリアやイギリスなどの英語圏への大学や大学院への留学を検討している人が受験するための試験です。
世界のさまざまな国で認められている試験で、大学進学をする場合はオーバーオール6.0以上、大学院への進学の場合はオーバーオール6.5以上のスコアであることが入学条件となっていることが多いでしょう。
ジェネラルモジュールは英語圏への国での就職や以上を目的にした試験です。
それに対して英検は、日本国内では有名な試験ではありますが、国際的に認可された試験ではありません。そのため、下記のような「国内での進学や就職」の際に優遇されることが多いです。
- 高校受験や大学受験の際に内申点の加点材料として用いられる
- ハイレベルな級を所持していると試験免除といった優遇措置を受けられることがある
- 高校や大学での単位認定として使用される
- 就職活動の際に「資格」としてアピールできる
受験生の数の比較
英検は日本国内で英語の資格として最も代表的な資格の1つであり、かつ受験や就職などさまざまな場面で優遇されることがあるため、受験生の数が非常に多いです。
2021年度にはおよそ410万人もの人が英検を受験しました。最も受験者数が多いのが中学生でした。
また、下記の表にもあるように英検の志願者数は年々増加傾向にあります。

IELTSは世界的に認められている試験であるため、国際的に有名な試験であるものの、大学・大学院留学や英語圏への国への移住といった限られた目的のために受験することになるため、受験者数は少ないです。2020年には世界全体で約300万人ほどが受験し、そのうちの6万人が日本人でした。
試験会場の比較
下記の表はIELTSと英検の試験会場の違いをまとめたものです。
IELTS | 札幌・仙台・埼玉・東京・横浜・金沢・松本・長野・静岡・名古屋・京都・大阪・神戸・岡山・広島・福岡・熊本の17都市 |
英検 | 全国の小・中学校、高校、大学、塾などの施設 |
IELTSの試験会場が全国で17都市と限られているのに対して、英検は全国中の学校を中心とした教育施設が試験会場になっています。つまり、英検の方が受けやすいということが言えるでしょう。
試験日程の比較
IELTSは受験する会場や試験の形式によって試験日が異なりますが、1年間で35日ほど受験できます。
そして会場・試験形式によって、全試験工程を1日で終了させるケースと、スピーキングテストを別日に設けて試験を2日にしているケースがあります。
遠方から受験をしている人は1日で試験を済ませ、試験会場まで通いやすく、万全の体勢でスピーキングテストを受験したい人は2日間に分けるなど、ご自身の都合や体調に合わせて選ぶと良いでしょう。
英検の場合は、従来だと年に3回(6・10・1月)だけ実施されてきました。そして英検3級以上になると、1次試験の結果次第ではスピーキングテストである2次試験が行われます。2次試験は1次試験の約1ヶ月後です。
しかし、近年「英検S-CBT」が導入されたことで状況が一変しました。英検S-CBTとはこれまで1次・2次と2回に分けていた試験を全て1日で済ませる試験で、ほぼ毎週実施されています。
土日だけでなく平日での受験も可能であることから、試験を受けられるチャンスが大幅に増えたということです。これまで仕事や学校で忙しくて中々日程が合わなかった人も、このような柔軟な試験日程であれば受験しやすいですね。
試験形式の比較
上記にもありますが、IELTSは2種類の試験に分かれ、それぞれアカデミックモジュールとジェネラルモジュールです。前者は英語圏の大学・大学院進学を、後者は英語圏の国への移住を検討している方が主に受験します。
試験内容についてはリーディングとライティングが異なりますが、それ以外の点においては同じです。
いずれの試験もペーパー形式とコンピュータ形式の2種類あり、記述式と選択式の問題が混在しています。
英検の場合は従来の形式だと、リーディング・ライティング・リスニングは筆記試験、スピーキングは面接官と直接対峙した面接形式でした。
しかし、英検S-CBTの場合は、スピーキング・リスニング・リーディングがコンピュータ上で、ライティング試験はパソコンに打ち込むか解答用紙への手書きのいずれかを選ぶことができます。そしてリーディングとスピーキング問題はマーク式です。全体的にTOEFLに少し似ていますね。
スコア算出方法の比較
続いて、それぞれの試験のスコア算出方法の違いについてご紹介します。
IELTSは受験者全員が同じ試験を受け、0〜9.0の0.5点刻みのバンドに分類されてスコアが算出される形です。そのため、合否がありません。
英検の場合は、級ごとに問題も試験時間も異なります。そして結果は「合格」または「不合格」のいずれかです。
試験結果の有効期限の比較
IELTSの試験結果の有効期限はアカデミックモジュールもジェネラルモジュールもいずれも2年間となります。有効期限が切れてしまった場合、再受験する必要が出るでしょう。
それに対し、英検の場合は1度取得すると期限が切れることがありません。
受験料の比較
下記の表は英検とIELTSの受験料についてまとめた表です。
IELTS (税込価格) | 英検(税込価格) | 英検 S-CBT (税込価格) |
---|---|---|
ペーパー形式:25,380円 コンピュータ形式:26,400円 | 1級:11,800円 準1級:9,800円 2級:8,400円 準2級:7,900円 3級:6,400円 4級:4,500円 5級:3,900円 | 準1級:9,900円 2級:9,000円 準2級:8,500円 3級:7,200円 |
IELTSの受験料は非常に高額であることが一目でわかるでしょう。これだけ高額な試験であるため、何度も気軽に受験するというわけにはいきません。1回1回の試験を全力で受けて、最低限の回数で目標としているスコアを達成することが大切です。
また、IELTSと英検どちらも共通して言えることですが、コンピュータ形式の試験の方が受験料が若干高く設定されています。
また、英検の場合、S-CBTで受験できる級は3級から準1級までなので気をつけてください。
ペーパー形式とコンピュータ形式はそれぞれ下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット | |
ペーパー形式 | – 小学校からずっとペーパー形式での試験を受けているため慣れている問題用紙に書き込みができる | – ライティング試験で大幅な内容の変更が難しい – リスニング試験の場合は座席によって音声の聞き取りに差が出る |
コンピュータ形式 | – リスニングはヘッドフォンがついているため集中して取り組みやすい – ライティングテストで加筆・修正しやすい。また文字数のカウントをしなくても良い – コンピュータの画面上に試験の残り時間が掲載されているので素早く時間をチェックできる – すぐに結果を知ることができる – 字の読みやすさを気にしなくても良い | – 素早くタイピングできる必要がある – 長時間パソコンの画面を見続けることで疲れを感じやすい |
ご自身の特徴や強みなどを考慮し、予算と照らし合わせながらお好みの形式で受験すると良いでしょう。
試験時間の比較
これはIELTSと英検のそれぞれの級の試験時間を比較した表です。
IELTS | 英検 |
---|---|
2時間45分 | 1級:2時間20分 準1級:2時間5分 2級:1時間50分 準2級:1時間45分 3級:1時間20分 4級:1時間5分 5級:50分 |
IELTSの試験時間が最長で、英検1級と同じくらい長いです。英検は級が上がるほど試験時間が長くなっていきます。
長時間の試験であっても集中力を切らさないための工夫やトレーニングが必要になるでしょう。
結果発表の比較
IELTSの結果はペーパー形式の受験の場合は試験日から13日後、コンピュータ形式の場合は試験日から3〜5日後にオンライン上で確認することができます。そして結果の証明書は郵送されるでしょう。
英検の場合は、1次試験は試験日から2〜3週間後、2次試験は試験日からおよそ10日後に結果を知ることができます。IELTSと同様に結果が郵送されます。
申し込み方法の比較
IELTSの場合は公式サイトで申し込みをします。受験料の支払い方法については下記の3つより選ぶことになるでしょう。
- クレジットカードまたはデビットカードでの支払い
- コンビニでの現金払い
- 郵便局での振り込み
英検の場合は、下記の3つの中からいずれかの方法で受験の申し込みをします。
- インターネットでの申し込み
- コンビニでの申し込み
- 特約書店での申し込み
いずれの方法であっても、現金だけでなく、クレジットカードでの支払いができます。そしてコンビニと特約書店での申し込みの場合は、それぞれ支払いを終えた後、願書を郵送する必要があるので忘れないように気をつけましょう。
英検S-CBTでの受験の場合はインターネットでの申し込みのみとなります。
IELTSと英検のスコア換算と比較

下記の表はIELTSと英検のスコアを換算したものをまとめたものです。
IELTS | 英検 |
---|---|
9.0 | – |
8.5 | – |
8.0 | – |
7.5 | – |
7.0 | 1級 |
6.5 | 1級 |
6.0 | 準1級 |
5.5 | 準1級 |
5.0 | 2級 |
4.5 | 2級 |
4.0 | 準2級 |
この表を見ると、IELTSのオーバーオール6.5から7.0が英検1級と同じくらいのレベルであることがわかります。そして、IELTSのオーバーオール7.5以上は英検では測れないほどハイレベルであるということです。
ちなみに、日本人のIELTSの平均スコアは、アカデミックモジュールで5.8、ジェネラルモジュールで5.7となっています。
まとめ:IELTSと英検を比較して違いを理解した上で受験しよう!

IELTSと英検は英語の4技能を測る試験ではありますが、それ以外の点で大きく異なります。
どちらの試験の方が優れているかということではありません。上記にもありますが、それぞれの試験で目的が異なります。ここで再確認しましょう。
IELTS: 海外の大学・大学院への留学、または海外移住を検討している方が受験する
英検:日本国内において、高校・大学受験や就職活動で活用するため、または自身の英語力を測るために受験する
これらの目的の違いを理解し、ご自分の目的に合った試験を受験しましょう。
コメント